4.1 事件発覚


現地:6月22日朝9時に一括取引の目的でサンタクララのGlenmar社にK.H.主任技師とI.O.主任技師達らは到着した.聴くところによると,前日の夜にこの二人は一連の成果により部長昇格は間違いなしと乾杯したという.二人とも将来を期待された人物であることに疑いはない.さて,その日,日立が要求した文書類が積上げられたGlenmar社の部屋に通されると,突然,FBIの2名により彼らは逮捕される.後ろ手錠をかけられて直ちにFBIサンノゼ事務所を経由してサンフランシスコ連邦ビルに連行された.この連行されている衝撃の姿が冒頭私が書いたNHK午前7時のトップニュースの映像であり,日本時間6月23日の夕刊各紙に写真として報道されたのである.日立は前日までに累計で62.5万ドル(当時の為替レートで約1.6億円)を支払っていた.<三菱電機は2.6万ドル;約650万円を払ったと報道されている>


1982/6/23日経新聞夕刊:米,産業スパイで邦人逮捕-IBMの機密盗む


1982/6/23日読売新聞夕刊:先端技術,し烈な争い,関係者


この日,司法長官William F. Smithが事件に関与した日立・三菱関係者6名を盗品移送共謀罪(conspiracy)で逮捕したこと,また既に帰国している12名の逮捕状も取ったと表名しているがこれは異例のことと報道されている.それだけ米国でも大きな事件であったということである.

これらは日本時間1982年6月23日;朝7時のNHK-TVトップニュースとしてIBM産業スパイ事件として報道される.現地逮捕者は日立関係者5名;外に三菱電機関係者1名であった.日立関係者とされているK.S., T.Y.とは面識はない.三菱電機のT.I.さんとは情報処理学会の研究会などで何度もお会いしたことがある.ここに6月30日の大陪審で起訴と評決された時の新聞記事を示す.


1982/7/1日読売新聞朝刊:産業スパイ事件-起訴状全文,
起訴された日立関係者一覧


また,NAS関係者で逮捕されたのは,当日自首したDr. Saffie,そしてGarretsonの囮捜査とも知らずにAWのコピーを$1,800/Volumeで売りつけたAyaziも逮捕された.逮捕状は元・IBM社員でIBMポーキプシー工場からAWを盗みだし,その後NASに勤務していたRaymond J. Cadetにも出た.AWの入手経路は 4.IBM産業スパイ事件の経過 に詳しく述べた.


大陪審の結果:刑事訴訟

1982年6月30日の大陪審の評決で起訴が決まった.帰国している9名には米国への出頭命令が出された.罪状は盗品移送共謀罪である.これは5,000ドル以上の価値ある物品を盗み出し,州を越えて複数人で移送した罪が問われたのである.このような罪状は日本にはないという.なお,最高刑は罰金1万ドルである.実刑もある罪だそうである.これらは翌日(7月1日)の日本の新聞に掲載されている.


1982/7/1日読売新聞朝刊:
          日立本社と17人を起訴-産業スパイ事件米大陪審評決


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