テーマC-01 有沢製作所・アスナ
(立体ディスプレイ)
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  著者:     NPOインテリジェンス研究所 理事 河野 通之 私のプロファイル

はじめに
*「立体」の簡易検索では471件に及ぶ検索結果がでた。しかも服飾デザイン、裁断、絵画、生け花、眼科、胸部疾患、化学、 映画、回路、設計など多岐にわたっている。以前から絵画などにおいては立体感を表現するために大変な苦労をし、遠近法などが 試みられてきた。1900年のパリ万博のころから立体画像がとられ始めている。
*ステレオカメラは6件が記載されている。
ラジオ人の夢を実現
1948の日本放送出版のラジオ新年号でSF作家の旗手海野十三氏が「ラジオ人の夢・・。立体テレビィ」(テレビの画面の中に美人が 立体的に現れる・・・手を出してみる)と語っている。まさに2007年に誕生した新局「BS11」にて立体放送され、この「立体放送」が 正夢となる。夢が語られてから約60年後に実現した訳である。BSアナログハイビジョン放送が終了することで、空いた枠に対して 本格的な放送免許の交付を申請、受理された。ビックカメラの関連会社として初代の山科社長が、既存他社に比して何か特徴がないと いけないと「立体放送」に白羽の矢が立った。これを可能にしたのは、㈱NHKメディアテクノロジー(当時NTS)〈以降NHKMTと呼ぶ〉 指導の下、我々㈱有沢製作所と㈱アスナ(以後有沢Gという)の協力の賜物と考えている。勿論公共放送する以上、放送方式、設備、 コンテンツ製作、視聴できる立体ディスプレイ、立体カメラ製作、視聴に対する安全性確保など課題は多岐にわたっていた。世界で 初めてのハイビジョン立体放送が放映された。(参照写真④、④-1)我々有沢Gは、中間素材メーカーであってTVメーカーではない ものの、将来のニーズを期待し、目に優しい立体視を可能にする材料の開発を行ってきた。以下これまでの足取りを以下に記す。

合流点
私の合流点は1999年に㈱有沢製作所に入社し、同社が本格的に立体市場に取り組もうとしているところに始まる。現役最後のお勤め であった。紙面の関係上、合流初期のころは項目だけにする。
1)出光石油との共同開発(強誘電液晶利用によるCRT用大型立体ディスプレイ開発)
2)USA・VREX社からのマイクロポール技術導入
3)立体プロジェクター開発量産販売(写真①、暗かったがポータブルで人気があった。)

メガネなし立体ディスプレイ量産
2002の初めに、パチンコ用メガネなし量産の話が突然発生した。ソフィア(西陣)と有沢製作所と、アドバイザーとしてアミタテクノロジー いずれもオーナー的な会社だから話が早い。簡単な予備テストを行い、量産への投資費用分担、開発スケジュール、製品化の予定が 春と決定された。新しものだらけだ。立体方式はメガネなし。バックライトは、今話題のノーベル賞に輝いた中村教授開発の初めての 量産白色LEDを使用、マイクロポールではなく、量産がきく光配向技術と液晶材料による「Xpol」を開発する必要もあった。そしてメガネ なしで立体視を可能にする光学設計等々。また、併せて大きさもあのパチンコ台の中に入らなければならない、今、振り返っても驚きの 仕様であった。全てが世界初だ。全て新しい方式なのにトップ会議で2003年春に販売されることがすでに決まっていた。当時は業界の 基準で、申請は約4ヵ月前までに要提出。それ以降変更不可。クリスマスのころに最終チェックが行われることになっていたが、11月末 での時点でまだ立体視が出来ないのだ。勿論コンテンツを製作する必要もある。関係者は皆、顔が引きつっていた。このチャンスを逃し たくないからだ。まさにクリスマスプレゼントのように、申請用のセットが5台年末に出来た。奇跡というしかなかった。「デルモニ」表示 つき「浮世絵」が完成した。(参照 写真②、②-1、図―1)申請許可後の量産も大変な戦いではあったが、何とか無事に出荷でき、 春に発売された製品は全国津々浦々に行き渡った。心配していた安全性など大きな問題もなく終了した。関係者は共同製作を通して、 技術上、共同制作方法、開発方法それぞれ大変な自信を得た。

NAB2006での展示大好評
2004年末に有沢製作所の子会社として立体のアプリケーションを行うためにアスナを設立した。2006年春にNHKMTさんに誘われて NAB(ラスベガス)にハイビジョンの立体ディスプレイ試作5台を展示した。一番人気になった。(参照写真③)。その場に、後で「アバター」 (Avatar)を制作し大成功を収めた(2400億円の興行成績)ジェームス・キャメロン監督が、この立体ディスプレイのコンテンツを身動きも せずじっと見続けていた。きっと製作中であったろうアバターが家庭にでも見られるようになると計算したに違いない。ディズニーからも 立体映画が次々に製作され、3Dが大きく動き始めた。日本でも前述の世界初の立体放送が始まった。3Dコンテンツの製作は必要だっ たが(NHKMTさん推奨の)サイドバイサイド方式の映像で既存のハイビジョンの設備のままで放映、録画ができこの関係からも3Dブーム は動き始めた。

国交50周年インドネシア博覧会(インドネシア~日本)展示
インドネシア・日本博覧会2008で、5万人の方々に立体映像を見ていただいた。この博覧会の目玉になったが、我々の運営も多忙をきわ めた。長だの列に並んだ小さな子供にも、一人ひとりに紙メガネを渡した。予想の倍以上はいったので、メガネはクリーニングし、また使う。 一日に何十回となく繰り返しだったから、一日に何回も並ぶ子供達とは顔見知りなりインドネシアがた後回収したのですっかり馴染むことが できインドネシアが益々好きになりました。「将来日本に行きたい」と言ってくれた子供たちが沢山いて今回の展示がいい親善になったと 心より思ったことだった。NHKMTの方に協力してもらい上映した、330インチの最新鋭の非圧縮フルハイビジョン画像で「日本の四季」と JR東海㈱の協力で「新幹線」を撮影上映した。ラウンジでも並行して46インチの立体ディスプレイでSTU研究所の協力いただき「昆虫」 「夜空の星座」も上映しこれも大人気だった。新幹線は当時インドネシアにとって時期尚早と思われたが、今は現実のものとなりつつある こを思うと感慨深い。(参照 写真⑤、⑤-1、⑤-2)

まとめ
1.業務用に使われる
一時の3D映像人気が収まってしまい、外国映画は継続しているものの放送番組などは見かけなくなった。医療系腹腔鏡手術など、 立体視が必然性のあるものは、世界中にその使用が浸透しつつあるようだ。今後はネットワークなどオンディマンドの形で見られるかも しれない。4K、8Kなどの超高精細の話もあるがやはり4K3Dなどは価値があると思う。先のInterBee2014の展示でNHKMTの30周年 展示において4Kの立体が展示されていて、これなら長時間視聴に耐える有用なものと感じた。更に、腹腔鏡手術の際に開腹手術と同じ 感覚で術出来るように、術部のすぐ上に設置し、術者の利便性を高めるディスプレイシステムができるなど業務用3D機器は、医療関係者 からの指摘を受けてさらに進化していくと思う。
2.3D技術使用の広がり
3D映像以外にも、3Dプリンターとか自動車における衝突防止(参照 引用・参考資料⑥ )にもステレオカメラを使いこの3D技術の利用 が行われ、今後の展開が楽しみだ。さらに今後、工場のロボット、災害復旧用のロボそして介護ロボットなどにも3D技術の利用が織り 込められ、この機能は疲れを知らないだけに、人の負担を軽減していくだろう。
3.私の夢
アスナ時代にテクニカルスタッフとして 金 相賢博士(早稲田大学 基幹理工学部 河合研究室)、森田正彦博士(理化学研究所)が創作し てくれた「StereoStage」が、私にとって最も印象に残る画像ステムであった。実際のデモの際にも、最も人気があった。(添付資料  写真⑥、⑥-1、⑥-2、⑥-3) 標本の蝶を触るとその蝶が活きいきと舞い上がる。また、そのシステムを超臨場感コミュニケーション 産学官フォーラム(URCF)に展示していたところ、FIFAの誘致チームから招致PRデモに呼ばれたこともあった。(添付資料⑥-4) 審査委員にも好評をえたが、残念なことに誘致にはいたらなかったが…。その時のコンセプトは今でも新鮮で、ヒビノ㈱の試作発表 (参考 引用資料 ⑤ )にある、大型千鳥方式の立体表示方法で実現できると思う。具体的なイメージとして、たとえば有明コロシアム (10,000人収容)のコート全面、上面、天井に大型LED立体ディスプレイを設置し、縦に浮かび上るあるいは沈むバーチャルのStereo Stage立体を視聴可能にする。上部から俯瞰する、あるいは見上げるなどして、サッカーは勿論、歌舞伎、音楽(ニュイアーコンサートなど)、 オペラ、バレー、プラネタリムなどに応用できる。また、遠方の立体映像・立体音響などを伝送し、たとえばハヤブサ2号の打上げの様子など を、現地にいるような臨場感をもって見ることができる。あるいは小さいころ見て感動したSF実写映画「海底二万マイル」の、原子力潜水艦 ノーチラス号の艦長になったような気分で海底を動き回る。以上のような環境の中で「StereoStage」用コンテンツを鑑賞したい。これが今の私 の夢である。
以上

引用・参考資料
①USP1564379 ,松廣憲治,マイクロポールシステム、紺バーテック28(8)、2-5(2000)
②深石 圭:立体映像技術、97,シーエムシー出版(2008)
③Xpolとその3D-TVへの応用 松廣憲治 EKISHOU Vol14l No42010
④http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/yukou_2008/hokokusho/work/work28.html
⑤ヒビノ、ビクターと協力し3D対応LEDディスプレイを発売
 -「ChromaLED 3D」。業界最小4㎜ピッチの製品も開発
 http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20101122_408849.html
⑥東京工業大学放射線総合センター准教授 實吉敬二氏:
 自動運転車はステレオカメラだけで実現できる――「アイサイト」開発者に聞く (1/2)
 http://eetimes.jp/ee/articles/1401/23/news016.html

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